A high school detective
 
 
 
 
 
入ってきた2人の生徒は、一組の男女だった。
 
女の方は、背は智より高い。(智がちっちゃいだけか)
黒髪のストレートヘアで、大きいツリ目が、女が気の強そうなのを際立たせている。
少しキツそうだけど、中々の美人である。
 
一方、男の方は、女や翔よりも背が高い。
締まった体は、彼が体育会系というのを示している。
一見、女とはただの友達、と言うような感じがしている。
そんな彼は、スクールバッグを肩に背負っていた。
 
 
 
「こんにちは!部長の日和翔っす!よろしく!」
『部長』というワードを強く言った翔。
「雪峰智春、です。」
静かな声でそう言う智。
 
 
 
「…」
沈黙が続く。
七郎は、?マークを浮かべて、翔と智を見た。
 
 
…2人は、『お前の紹介をしろよ!』という顔で睨んでいる。
 
 
 
俺、部員じゃねぇ!!!
 
 
 
そういう心の叫びは、届くはずも無い。
 
 
 
 
「…えーっと…森戸七郎、です。」
散々待たせた割りに普通のやつじゃねぇか、という顔をした男女2人。
…なんで!?
 
 
 
 
 
「えーっと、あたしは…くしゅん!」
女がくしゃみをした。
「ねぇ、日和君、寒くない?」
そう鼻を啜りながら、女が言う。
「えぇっ、俺寒いっ!?」
吃驚して眼を見開く翔。
「気温のこと言ってるんだよ!」
七郎がつっこんだ。
 
 
 
「わかった!じゃあ、点けまーす。」
智が嬉しそうに言った。
「智先輩、ストーブとかファンヒーターあるんですか?」
七郎が言った。
だって今は肌寒いと言っても春。
ファンヒーターなど、置いてあるのか?
 
「えっ、ファンがヒいたっ!?」
さらに驚いた表情をする翔。
「お前もう黙っとけ。」
七郎はそれだけ言って後は無視。
 
 
 
すると智は、ピッと。
 
 
…TVを点けた。
「なんで!?」
 
 
 
「寒いなら、バラエティ見て笑ったり、ドラマ見てドキドキしたりして、温まったらいいんじゃないかな?」
「…あぁ、気持ち的にですか。気持ち的に。…。」
なんで会議室にTVが、という疑問もあるが、 今は雪峰智春に対しての疑問でいっぱいだ。
 
 
…点いているのはニュース。
 
 
『女優の田村治子さんがタレントの大森宏さんと結婚しました。できちゃった結婚だそうです。』
「翔!翔!『女優の田村治子さんがタレントの大森宏さんと結婚しました。できちゃった結婚だそうです。』だって!!」
「引用!?せめて自分でアレンジ付け加えようよ!さん付けとか、デスマスを取るとかさ!」
「そっかー。『女優の田村治子さんがタレントの大森宏さんと結婚しました。できちゃった結婚だそうです。』かー。」
「お前もか!せめて『田村弘子が大森宏とできちゃった結婚で結婚した』でいいよ!」
「でさ、翔、七郎。できちゃった結婚って、結婚ができちゃったってこと?」
 
 
…どこまでも天然なんだ、この人は。
 
 
 
 
「…ねぇ、あたしらの存在忘れてない?」
苛々したように背後で女が言った。
 
「「…あ。」」
 
七郎と翔は声を同時に漏らした。
 
「あ、ハモッた!ハモったら、『ハッピーアイスクリーム!』って言ってお互いの肩を押さえると幸せになれるんだってさ!」
嬉しそうに言う翔。
「知らねぇよ!やらねぇからな!ってかハモッた時点でお前幸せそうだけどな!」
こんなことで幸せになれるアホがたまらなく憎かった。
 
 
「ごめんなさいっ!」
智が頭を下げた。
 
「あ、え、う、うん…。ちょ、泣きそうじゃんアンタ!あたしもちょっと言い方キツかったわ、うん!ごめんね!」
智が一生懸命謝ると、誰もが許してしまうだろうな、と七郎は確信した。
 
 
 
 
 
 
「あたしは城野優枝(しろの ゆえ)。3ーDよ。」
女が言った。
「俺は松島大樹(まつしま だいき)。3−D。 こいつとは小学校のときからかな。」
男が言う。
 
 
 
 
「で、今日はどんなご用件で?」
「それはねー、こいつが、好きな子にあげるプレゼントを失くしちゃったのよ!」
バンッと、優枝が大樹を叩いた。…怖かった。
「いだっ!いってーてめぇ!それで…それを言ったら、優枝が探偵部行くぞ!って。 俺はいいって言ったのにな。」
大樹が腰をさすりながら言う。
 
「ありがとうございます!」
急に智が頭を下げた。
その行動にびっくりする一同。
 
「え、なんでですか?」
七郎が聞く。
「えっ?だって、優枝先輩が、探偵部を選んでくれたんだもん。」
…そこかい。
と、あえて一同はつっこまないことにしておく。
 
 
 
「で、何です、プレゼントは。」
「えっ…え、えーと。」
「あら、そういえばあたしそれ聞いてなかったわね。なんなの?」
「るせぇ、お前だけには絶対教えないからな!」  
「何よそれ!大体、誰にあげるかも聞いてなかったわ!誰なのよ!?
 泉ちゃん!?貴子!?長野さん!?」
「お前には絶対言わないっ」
 
 
なるほど、この2人は喧嘩友達の幼馴染というところか。
漫画やドラマでよくみる設定だ。
 
 
 
「えっと、外はピンクの袋。」
「大きさは?」
「ええと…このくらい。」
「なるほど…。うんうん…。」
 
 
翔が、真剣な眼差しで頷いている。
「え、何かわかったんですか?」
七郎が驚いて聞く。
 
 
「日本が野球で世界一になったのは嬉しかったなってこと。」
…期待した俺がバカだった。
 
 
「冗談だって、太郎!」
「もはや数字じゃない!」
 
 
 
すると、翔が、ジッと2人を見据えた。
…またなんかアホ発言をするのだろう、と七郎はそれを見ていた。
 
 
 
 
「プレゼントは、何のために?」
いきなり、翔が言った。
「え、…あ、そ、そいつの誕生日が…。」
ドモリながらも、大樹は言う。
優枝は、
「へぇっ、今日の人なんだ。調べちゃお。」
とニターと笑う。
 
「じゃあ、その人は彼女なんですか?」
質問を重ねる翔。
「…いや、違う。」
答える大樹。
 
「…ちょっと、優枝先輩。」
視線は優枝に移った。
「何?」
「なんで優枝先輩が、大樹先輩のプレゼントのこと、知ってたんですか?」
「え?あー、相談されたのよね。『女は何をもらったら喜ぶ?』みたいなことを。
 だから、『好きな子にあげるんでしょ?』って言ったの。 そしたら、『そんなとこ、』だって。
 だから、プレゼント渡すんだなぁーってさ。
 
 で、放課後に、鞄の中をがさがさ漁ってた大樹が、青い顔してたから、
 『どしたの』って聞いたら、『プレゼントがない』って、言ったから、あたしが探偵部に行こうって言ったのよ。
 まぁこいつは『行かなくてもいい』って言ってたけどね。」
優枝が、一部始終を話し終わると。
 
 
 
翔は、嬉しそうに頷いてから、
「…少し、会議室の外にいてくれませんか?」
…と言った。
 
「え、どうして?」
その言葉に驚く優枝。
七郎も、大樹も驚いている。
「…お願いします。」
翔は、それだけ言うと、
 
「…仕方ないわね。」
と、優枝は出て行った。
 
 
 
 
 
「…おい、日和、どうして優枝を…?」
大樹が聞いた。
「智、データ。」
「はーい。」
 
智が、一枚の白い紙を渡す。
それには、黒い文字で表と、文字が書かれてるように見えた。
 
 
「…やっぱり。」
そう笑う翔は、嬉しそうだ。
 
 
 
そして。
 
 
 
「大樹先輩、もしかして、プレゼントを渡す相手って…
 
 
 優枝先輩じゃないですか?」
 
そう言った。
 
 
 
「えっ!?」
大樹が声を上げた。  
七郎も、翔の言葉に驚く。
 
「あ、あぁ…そうだけど…。」
「え、なんでわかったんですか、翔先輩。」  
 
翔は、にっと笑う。
 
 
 
 
「だって、優枝先輩は、大樹先輩が渡すプレゼント、知らなかったじゃん。
 それに渡す相手も知らないし。
 まぁ、大樹先輩が優枝先輩に言うのがイヤってこともあるかもしれないけれど。
 
 探偵部に行くぞ、って優枝先輩が言ったのを、大樹先輩は断ろうとしてるのは、優枝先輩に渡しづらいからだろうし。
 好きな子のこと、『そいつ』って言ったのは、その人が友達のような関係だからじゃないかなぁ。
 彼女なんですか?って聞いたら、違うって言うし。
 だから、薄々そうじゃないかなーって。
 
 で、さっき智に、3-Dのデータを見せてもらって…優枝先輩の誕生日、明日だったんだから、確信!」
 
 
「え、でもなんで大樹先輩今日プレゼント持ってたですか?」
七郎が聞く。
「七郎、明日土曜日だもん。わざわざ行って渡すなら、別だろうけど。
 俺ならそんな面倒なことはしねぇな。」
翔が言った。
「…な、なるほど…。」
七郎は、驚きながら呟いた。
 
 
 
…これがあのアホバカマヌケ!?(酷い
 
 
 
 
「で、大樹先輩、朝にはあったんですね?」
「うん…だけど、放課後見たら、なかった。」
「先輩は教室出たこと、ありましたか?」
「…今日、入学式だっただろ?それでたぶん、皆出たと思う。  
 だけど鞄からはなれたのは、入学式だけだよ。」
 
 
 
「うーん…」
唸り始める智と翔。
 
「先輩、誰かに言いましたー?」
「何を?」
「優枝先輩にプレゼントをあげるって。」
「言ってないけど。…お前らにしか。」
「そっか、じゃあー… …犯人は俺らかもしれない、どうしよう、七郎!」
「お前の頭がどうしようだよ。」
 
 
そもそも盗られた後に言われたじゃねーか。
 
 
 
 
「優枝先輩っ、入ってきてくださーい。」
キィィ、と扉が開く。
 
 
 
「何の話をしてたのよ。」
「いろいろvvカラーカラー。」
「だぁぁぁっ、それは●ン太郎一家で既に使った!」
「え、マジでか!?ポ●太郎一家で使ったか!? ちょ、智、パソコン開いて!チェックしよ!」
「同じ世界だから!ここ!」
「あー、七郎そんなこと…!」
 
 
 
 
…ピー(放送禁止用語
 
 
 
 
「…失礼しました。」
 
 
 
「…で、なんなのよ。」
「優枝先輩、プレゼントのこと、誰かに言いました?」
「えー?…うーん、言ったかしら…。
 
 
 …あ。」
 
 
 
優枝が、眼を開いた。
 
 
 
「な、なんですか!?」
「えっとね、確か言ったわ! 『大樹が今度好きな子にプレゼント渡すんだって〜』ってね。」
「え、誰に?」
 
 
 
「誰って…あたしの友達の、
 …美鈴、愛菜、渚…。」
 
「深浦 美鈴(ふかうら みすず)と、稲原 愛菜(いなはら あいな)と、沢井 渚(さわい なぎさ)?」
「そうっ!そのコたちっ」
「全員3-Fですか?」
「ううん、渚はD組。」
「後はF組だよな。」
 
 
「智ー、資料!」
「はーい。」
パソコンを開いて、資料をプリントアウトする。
 
 
 
「…なんでこいつらが資料を持っているんだ?」
こいつら学校の資料を流失させているのか?
と、七郎には疑問が。
 
 
 
「翔、できたー!!」
…智の無邪気な笑顔で、それは消え失せていた。
 
 
 
 
 
深浦美鈴、3-F。
バレー部の主将をしている。
身長・167センチ、体重52キロ。
性格・明るく社交的。負けず嫌い。
出身・百合永小学、猿木中学。
家族構成・父(会社員)、母(専業主婦)、姉(保田場大学2年)、弟(猿木中学1年)
資料の写真から見れば、明るい茶髪のショートカットと、大きな瞳が印象的である。
 
 
…って、
 
「…えええっ、これはプライバシーの侵害じゃないかっ!?」
七郎が叫んだ。
「ぷれいぼーい?」
首を傾げて聞く智。
「違います!プライバシーです!あんたら一歩間違えれば犯罪者だぞ!?」
「ええっ、なんで犯罪者なの!?ヒロシ!?」
「ヒロシって跡形もないじゃないですか!俺は七郎です!」
「お前も探偵部なんだから犯罪者の仲間入りだろ〜。」
「まだ俺は入ると言ってねぇぞ!」
 
 
ギャーギャー言っている間に、翔が次の資料を読んだ。
 
稲原愛菜、3-F。 美術部。
身長・158センチ、体重46キロ。
性格・おしとやかで、消極的。無口。
出身・大月小学・朝葉中学。 家族構成・父(公務員)、母(パート)、妹(朝葉中学3年)
肩までの長さの黒髪と、眼鏡、口元のホクロ。
 
 
 
「愛菜はね、あたしや大樹と同じで、小学校から一緒なのよ。」
「稲原とも長い付き合いだけど、あんまり俺は喋ったことねぇなぁ。」
 
 
 
沢井渚、3-F。 バスケ部マネージャー。
身長160センチ、体重50キロ。
性格・しっかり者、姐御的。物怖じをしない。
出身・氷見小学、猿木中学。
家族構成・父(自営業)、母(自営業)、兄(会社員)、弟(呉山高校2年)、弟(猿木中学3年)、妹(猿木中学2年)。
黒髪のポニーテールと、薄い唇、円らな瞳。
 
 
 
 
 
「…この中に容疑者がいるってこと?」
「おいおい、なんで俺のプレゼントに狙いがあるんだよ。 もしかしたら、ただ俺が失くしただけかもしれないのに…」
「朝にはあったんでしょ?」
「あ、うん…」
「だけどそれ以降は開けてないんでしょ?盗られたんじゃないんですかねぇ。」
「まぁ、もしかしたらこの3人の中で誰かが、他の人に言ったかもしれないけれど…」
「たぶん言うような性格じゃないわよ、3人とも。もしかしたら、美鈴あたりが言うかもしれないけど…。」
「まぁ、この3人を調べてからにしましょうか。」
 
 
 
 
 
 
翔がにこっと笑った。  
 
 
 
 
 
 
七郎は、その笑みに、何故かゾクリとした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Next
 
 
 
 
 
また続くのかいぃぃぃぃっ!!!!
すみません、前編ってかいたのに。
私も後編、のつもりで頑張ったんですよ。
だけど中編になっちまっただ…(誰
 
 
すみませんすみません氷菜様っ。
どうか貴方の手で締め上げてください。
 
 
 
 
 
 
いえいえ。そんなそんな。
こちらこそ、お忙しい中書かせてしまって申し訳在りません…。
大爆笑しながら読ませていただきました!おもしろすぎです!
それに比べてあたしは…。
サイトも放りっぱなしですし、深空様に押しつける(ヲイ)駄文もまだですし…。
本当にすみません。
そして、こんなサイテーはあたしにこんな素敵は文をありがとうございましたっ。
後編も、楽しみにしております!